その時代のアウトな人達

素敵なダイナマイトスキャンダル (http://dynamitemovie.jp/)

テアトル新宿にて鑑賞。
で、


どうかしてる時代のどうかしてる人達の話。


という感じ。
原作でも有名な冒頭の母親のダイナマイト心中の話から、工場の話、デザイン事務所、キャバレー、ピンサロ、そして雑誌編集部の話まで、まあ徹頭徹尾「どうかしてる」(笑)。
で、その時代のその場所にいた人達もまた「どうかしてる」人達であったという感じ。
唯一前田敦子演じる末井氏の奥さんだけは普通の人っぽく描かれてはいる。けど、よく考えると家で旦那がエロ看板やエロ垂れ幕を描いてるのを楽しげに見てた人なので、まあちょっとズレてはいるのかもしれん。
これは本来なら常識側に居なければいけない猥褻物の取り締まりをする警察の側もそうで、なんども猥褻描写の指摘をしているウチにだんだん何が猥褻で何が猥褻ではないか判らなくなってくる辺りも「どうかしてる」(笑)。しかし、これは「じゃあ猥褻ってなんやねん」という啖呵にも見えてきて、それはそれで面白かった。

それにしてもまあ、当人達は楽しかったかもしれんけど、今のポリコレ的に見ると、ほぼアウトな事ばかりで、ちょっと観ている方が居心地が悪くなる部分も結構ある。特に後のアラーキーこと荒木経惟氏が絡むあたりは大体酷い。今なら大体アウトというかたぶん今から問題にされてもアウトだろう。(苦笑)
でもって、その荒木氏をノリノリで演じてるのは誰だろうと思ったら、菊地成孔だったのはちょっと驚いた、と同時に面白かった。いやー、こういう事出来る人なんだなぁ。(苦笑)
あと、やっぱり主演の柄本佑が、まあ巧い。というか、明らかに末井氏に見えてしまうシーンが結構あったのが興味深かった。

それと、全体的に末井さんの奥さんが良い人すぎるよな。と思ったけど、これはアレかな、原作も奥さんに対する謝罪文というかラブレターというか、そういうメッセージ的な要素があったからなのかもしれん。


ともあれ、昭和のどうかしてて滅茶苦茶な人達を観るにはオススメ。でもって「これは今だったら完全にアウトだなぁ…」と考えながら観るるのも結構オススメ。

帰ってきたドライブ感

ちはやふる −結び− (http://chihayafuru-movie.com/news/)

MOVIX亀有にて鑑賞。
で、


良い意味で一作目の良さが戻ってきた感じ。


正直なところ序盤は前作「下の句」の時のウェットな感じの話から始まっていたので、ちょっと嫌な予感がしていたのだけど、それは杞憂に終わって、競技かるた部の新人や名人周防のキャラクターの面白さや、第一作「上の句」の時を彷彿とさせる競技の描写もあって結果面白く観れた。
にしても、よく考えられている印象。というか、下の句の悪かった部分をちゃんと把握して上の句の時のドライブ感を復活させたのは結構見事だと思った。
ただ、松岡茉優演じるクイーン若宮の出番が少なくてぶっちゃけコメディ・リリーフ的な扱いに終始したのはちょっと残念。もうちょっと活躍するところが観たかった。まあ、団体戦を観戦している時に下の句でも特徴的だった「表情の変化で全てを語る」部分があったので、まあ良しとするか…な?(苦笑)
で、これは上の句同様に「勝つロジック」が結構ちゃんと考えられているのも好感が持てる。これは序盤の名人戦についてもそうで、劇中序盤は良くわからないけど、ちゃんと後でロジックが判るようになっているのも面白かった。
ただ、全般的に「特定のある能力」に依存しすぎてはいないか? とは思うが。(苦笑)


どうも出演者の年齢を考慮して今作を最終作とする為に主人公達が三年生の時の大会をメインに持ってきているのだけど、その影響で「二年時の大会はどうだったのか?」とか「新入部員が一人も加わっていなかったのは無理がないか?」とか色々気にならんこともない。というか、もうちょっと早く企画を動かせれば二年生の時の話もちゃんと描けたんじゃないか? とも思う。
それと、ちょっと関連するけど前作までのあらすじを完全にカットしているのも気になった。観た人の中には「前作を知らなくても大丈夫」という人が居たけど、まあ嘘だよな。(苦笑) 三年生になった部員の個性とか競技かるたのルールとか國村隼演じる原田は何者なのか? とか全然判らんよな。


ともあれ、前作までちゃんと観てきた人には面白く観れる良質の青春(?)映画だと思う。オススメ。

人魚姫の物語(?)

シェイプ・オブ・ウォーター (http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/)

シネ・リーブル池袋にて鑑賞。
で、


これは、ギレルモ・デル・トロ流の人魚姫の物語だ。


という感じ。
まあ実際には半魚人の話であって、元ネタとなる半魚人映画が有るのは知ってるんだけど、観終わった後の印象としては人魚姫っぽい印象が残る。
そして、凄く良い映画なのだけど、コレがアカデミー賞を獲ったのは、すごく意外だ。と言うか、この時代のこの時期でなければ獲れなかったんじゃなかろうか? というのも、#MeToo に端を発した騒動やら差別やらと言った「時代の空気」が醸成されなければ、コレはただの「半魚人映画」として忘れ去られる運命だったかもしれん。
それを象徴するシーンも結構有って、全てにおいて「良い人」は居ないし、全てにおいて「悪い人」も居ない辺りもまた象徴的。ストーリー全般において悪役として描かれるストリックランド氏も彼なりに「その時代の空気」に抗えずに居る描写も丁寧に描かれていて良かった。
それと、ちょっとネタバレ風味だけど、異種族恋愛物では滅多に描かれることのない性的な部分にもちゃんと触れている。(たぶんその為に) R15 という興行的には不利な要素になるにも関わらず、(たぶん相当な覚悟を持って)その辺りにしっかり踏み込んでいるのは、そこが監督の一番拘った部分なんじゃなかろうか?
で、異種族恋愛物でのお定まりの拒否から寛容から恋愛への描写は、殆ど無いのもまた然りで、「異種な存在同士での恋愛にそういうハードルを設定する方がおかしい」という明確なメッセージを感じる。


SF怪物物の様に見せかけたかなり本格派の恋愛映画だと思う。オススメ。

良い葬式でした

blank13 (http://www.blank13.com/)

シネ・リーブル池袋にて鑑賞。
で、


これはあれだ、斎藤工こと齊藤工監督版の「お葬式」だ。


という感じ。
前半こそ、借金を残して失踪した父親が見つかった時は余命宣告されて…という、どこかで聞いたような話なのだけど、後半の葬式の部分になると、かなり「お葬式」だ。ぶっちゃけ前半と後半で別の映画みたいな感じですらある。
導入部の「松田違い」からして、とてもありそう、というか私自身が同じ事を経験しそうなアレでちょっと笑ってしまった。さらに後半になると、もうずっとクスクス笑いが止まらない。佐藤二朗の反則的なというか多分反則の演技を筆頭に葬儀の出席者の面々の演技がどれもこれも面白くて可笑しい。でもって、それを受ける親族席の高橋一生斎藤工松岡茉優の三人の表情やリアクションがまた可笑しい。あるカットでは松岡茉優吹き出しそうになってて*1、こっちも笑ってしまった。
そこまで笑わせておきながら、最後はちゃんと前半で語られる過去のエピソードがちゃんと生きてきたり、導入部のアレもちゃんと生きてきているのが判って、ちょっと関心してしまった。


で、この映画、前後半通じて監督の好みなのか、カットカットでかなり綺麗な「絵」をつくる感じで人の距離感とか感情をセリフではなく絵作りで表現する感じで、そういう面でもとても好感が持てる。


ともあれ、ぶっちゃけ全くメディアで宣伝してないし、シネ・リーブル池袋では上映期間中にもかかわらずポスター1枚貼ってない(!)*2という冷遇ぶりだったけど、これは結構な拾い物の傑作だと思う。超オススメ。

*1:アドリブが結構入ってるんだろうなぁ

*2:これは本当にどうかと思う。シネ・リーブル池袋の認識を疑うレベル。

90年代の病んだ人々

リバーズ・エッジ (http://movie-riversedge.jp/)

MOVIX亀有にて鑑賞。
例によって(?)原作は読んでいない。
で、


90年代ってこんな重い時代だったっけ?


という感じ。
いやー、重い。というか、病んでる病んでる(苦笑)。
でもって、登場人物の殆どに共感できない。一番まともと言うか常識のこっち側(?)に居る(と思われる)若草ハルナにしすら、ちょっと共感できない。単に私が彼らより歳をとっているから…であれば話は単純なのだけど、それ以前にちょっと感性が違うっぽい。
…けど、こういう人達に惹かれる心理は分からんでもない。私自身は誰にも好感は持てなかったし、共感もしないけど。
で、この作品(の原作)がちょっとした時代のアイコン的に扱われていたというのも、なんとなく判った。「まあ、そうだろうね」という程度の理解だけど。


でもって、まあ、クドクドと書いてるけど、ぶっちゃけちょっと乗れなかった。(苦笑)


原作が合わなかったのか行定勲監督の演出が合わなかったのかは判らんけど、個人的にはちょっと乗れないタイプの映画でありました。
あ、たぶんこれは映画オリジナルの演出だと思うんだけど、要所々々で登場人物に謎のインタビューをするシーンがあったんだけど、この演出はちょとと面白かった。上映時間が足らなくて人物を描写しきれなかった事の苦肉の策だったのかもしれないし、ちょっと流れをブツ切りにする副作用も有るには有るんだけど、短時間に人物を判らせて、その代わりに話をきっちり描くという思い切りの良さは、ちょっと面白かった。
あと、エンドロールの曲が流れてきた時、どっかで聞いた声だな〜と思ったら小沢健二だった。というか、オザケンの真似をしている別の歌手かと思ったら本人だった(苦笑)。結構高音が辛くなってきたのかなぁ。(しみじみ)


ともあれ、個人的には乗れなかったけど原作のファンとかこの手の病んだ人達の話にある種の美しさを感じる人は観てみても良いんじゃないかな? という程度にオススメ。

紳士服屋はウィスキー屋の…

キングスマン:ゴールデン・サークル (http://www.foxmovies-jp.com/kingsman/)

MOVIX亀有にて鑑賞。
で、


ちゃんと面白かった。(笑)


いや、キックアス2の事も有ったのでマシュー・ヴォーン、続編大丈夫か? という心配は有ったけど、前作程じゃないかもしれんけど、まあ面白かった。
相変わらず、細かい事を言ったらおかしな部分も有るには有るんだけど、そういう事を気にする種類の映画でもないので問題なし。そして相変わらずスローとクイックを断続的に織り交ぜたカメラを振り回してワンカットに収める演出も健在。もはやこれが無いとキングスマンじゃない感じがする。
で、まあ最初から驚いたのは前作のラストの王女とのアレは007的なお遊びだと思ってたら、ちゃんと今作まで引きずってた(笑)。いやはや。
でもって、これは前作と同じなんだけど、エグジーの喋り方がイギリスの庶民のそれな部分と前作で仕込まれた「礼儀正しい」喋り方がコロコロ変わるのが可笑しい。英語が分からなくても、喋りの違いがちゃんと分かるので、字幕版の方が良いと思う。というか、吹き替え版だと、どうやって処理しているのか気にはなるけど。


それと、今回から登場したキングスマンの盟友的組織であるステイツマンがウィスキー・メーカーだというのが面白い。そりゃイギリス人からすればアメリカのウィスキーなんざ二級品(だと思ってる)よな。
とはいえ、ハル・ベリーの無駄遣い感は強い。しかし、こんな小さい役をよく引き受けたよな。(しみじみ)


ちょっとだけ気になるのは、やはり彼方此方で言われてはいるけど「悪役」のジュリアン・ムーアが頑張ってはいるけど、悪役としては迫力不足。まあ前作のサミュエル・L・ジャクソンと比べるのは可哀想ではあるけど。
あと、ちょっと悪役としてのクセが少なく感じるのは、前作のヴァレンタインと違って行動に「僅かだが理がある」と思わせる部分が有るからかも。ここら辺は、映画を楽しみながらも(良い意味で)ちょっと考える部分。


そうそう、前作でアレだったハリーの処理は結構気を使って辻褄をあわせてはいた。*1とはいえ、だとすると「前作のヴァレンタインの一件の時にステイツマン達は何をやってたんだよ?アメリカはお前らのシマじゃないのか?」という部分は、ちょっと苦しいと思う。(苦笑)


ともあれ、前作を観た人には当然オススメ。前作を観ていない人は今すぐDVDでもBlu-rayでもネット配信でもなんでも良いから観ておいた方が面白さが違うと思うとです。

*1:ハリーはあのまま普通の人になった方が幸せだったかも…という部分は結構考えさせる…。(謎)

これはスター・ウォーズなのか?

スター・ウォーズ/最後のジェダイ (http://starwars.disney.co.jp/movie/lastjedi.html)

ほぼ満席のMOVIX亀有にて鑑賞。
で、


いーのか? これで?


という感じ。(苦笑)
確かに映像は素晴らしいし、前作で良く判らなかったカイロ・レンの扱いがハッキリしてきたり、というか新世代の話になると言うのが判ったり、という良い点も有る。
…けど、まあ何と言うか…色々と難点が多すぎる気がする。
曰く、これ宇宙空間だよね? 重力の影響が有る空間もあるだろうけど、重力前提の兵器ってどうなの?
曰く、共和国軍には馬鹿しか居ないのか?
曰く、いやいやフォースってそんな事も出来ちゃう設定なの?
曰く、ファースト・オーダー側のアノ人の扱いもコレで良いの? 出自とか来歴とかその辺のアレは描かなくて良いの?
曰く、あれだけ引っ張ったアレは…無駄…なの?
曰く、前作であれだけ引っ張ったルークの扱いはコレで良いのか?
曰く、相変わらず大勢人の死ぬ映画だが、昭和の日本映画並に自己犠牲上等の展開で良いのか?
等々、いろいろとクエスチョン・マークが浮かんできてしまってしょうがなかった。(苦笑)
とは言え、そこはそれスター・ウォーズだと思わなければトンデモ風味のスペースオペラだと思えば、まあそこそこ面白い…かなあ?(苦笑)


しかしまあ、なんかどこかで見たような場面の多い映画ではあった。観てる最中に心の中のツッコミの一部を書くと…。
・「イデオンかよ!」
・「アンドロメダ・ストーリーズかよ!」
・「ジュマンジかよ!」
・「アナハイム・エレクトロニクスかよ!」
個々の意味についてはネタバレになりそうなので割愛。(笑)


ともあれ、ここまで付き合ってきたので一応エピソード9も観ますけどね。*1
と言う訳なので、今までのスター・ウォーズとの整合性とかSF的考証とか思い入れとかを無視できるか、エピソード9も観るという人は、まあ観ても良いんかもね。(苦笑)
J.J.エイブラムス監督、次が最後だと思って、自分でちゃんとしましょう。(笑)

*1:という態度が映画の為に成らないのかも知れないが、それはそれとして…

毎度おなじみ…

探偵はBARにいる3 (http://www.tantei-bar.com/)

MOVIX亀有にて鑑賞。
で、


良くも悪くもプログラムピクチャーっぽくなってきた。(苦笑)


いやほんとに。
大泉洋演じる探偵は例によって例のごとく面倒な事件に首をつっこむハメになって、例によって酷い目にあって、例によって美女に翻弄されて、でもって例によって例のごとく終わるという…。(苦笑)
なので、あんまり色々書くことも無さげ。


しかし、これはこれで結構面白いので良いか。という感じ。


ただ、ちょっと残念だったのが前2作よりも「札幌ススキノの愉快な人達」的な描写はかなり控えめで、札幌ならではという話になっていない感じがしたのがちと残念だった。
で、このシリーズ、前作ではストーリーに結構大きな穴が有って残念だったのだけど、今回はそこまで大きな穴は無さげ。とはいえ、やっぱり1作目の完成度になってないかなぁ…というレベルだった。
それでも面白く観れてしまうのは、やはり偏に大泉洋松田龍平による探偵と高田のコンビが「観てて楽しい」二人になってるからだろうと思う。この二人じゃなかったら、この映画、結構壮大に大コケしてたんじゃないだろうか。


ともあれ、大泉洋松田龍平の掛け合いを楽しみたい人には割とオススメ。

アンドロイドはビニールの子宮から生まれるか?

ブレードランナー2049 (http://www.bladerunner2049.jp/)

ユナイテッド・シネマ豊洲にて鑑賞。
で、


いろいろと思う所はあるが、それこそがブレードランナーなのでは?


とか思った。
まず、まあ長い。(笑)
2時間40分は、やはり長かった。そして、冗長なシーンが、まあ多い。けど、その冗長なシーンを手短に切ってしまうと、たぶん映画その物のペースはブレードランナーではなくなってしまう気がする。思い出してみれば前作のブレードランナーはエピソードの数も少なく話の展開もゆったりとしていて、短くしようと思えば、たぶん1時間くらいになるような映画だった。そして今回の2049は前作よりもエピソードというか展開が多いので、それを前作と同じペースで描くと確かに長くはなるな。とか思う。


それと、これは話の展開やらラストやらに関わる部分もあるのだけど、結構腑に落ちない、と言うか矛盾がある様に見えたり、ラストのアノ人がアレだとするとアノ人が気付いていないのはおかしくないか? とか色々と頭にクエスチョンマークが幾つも湧いて出る。けど、それもまた前作と同じだよな。とも思う。前作では幾多のシネフィル的な人達によってブレードランナーの「物語」を深読みしてきたかを考えると、今回もまあ深読みされるんだろうなぁ、と思う。


あと、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督はかなり前作を研究してこの続編の「お話」を作り出したんだな。これを観てから前作を見返すとレイチェルの存在や登場の意味が完全に変わってしまっているのに気付くと思う。そのレイチェルという存在の大転換こそこの映画のキモという気もする。
にしても、映画内でレイチェル(らしき何か)が登場するシーンは前作を知っていると悲しい。ついでに主人公のブレードランナー'K'の存在も結構悲しい。うーむ。


あ、そうそう、この映画、やっぱり前作は観ておかないと、多分最も重要な部分が半分位しか分からないと思う。映画そのものは長いけど、前作ではどうだったかの説明は殆ど無いのでそこは覚悟しておく必要が有るかも。


ともあれ、まあ前作を観たことのある人には必見の映画。と言うか観ないと再び訪れるブレードランナー論争を全く楽しめないと思うので、断然オススメ。そして前作を観ていない人は、どのバージョンでも良いから一本観てから本作を観に行くことをオススメしたい。

彼女がその真相を知らない物語

彼女がその名を知らない鳥たち (http://kanotori.com/)

ユナイテッド・シネマ豊洲にて鑑賞。
で、


思ってたより怖い映画だった。


と言っても、露骨なホラーという感じじゃなくて、人間の内面の怖さがじわじわ来るような映画。
もちろんミステリー風味も結構あって、素直に観てると結構「真相はいったい…」的な思考が結構出て来る。
しかし、それにしても、まあ誰にも共感出来ないというのは本当だった。(苦笑)
唯一「良い人」的な人として描かれていて、終始ヒロインに全てを尽くしている(阿部サダヲ演じる)陣治すら、ちょっと痛々しくて共感しづらい。というか、「こんな女捨ててしまえ」とか思ってしまった。


けど映画として良く出来てる。面白い。


ヒロイン、蒼井優演じる十和子は出だしからクレーマーとして登場し、どうしようもなく嫌なオンナであるにもかかわらず、時折凄く愛らしく見えてしまう瞬間が有る。この辺りは蒼井優の素晴らしいところ。
え、黒崎と水島という十和子にとって対になる二人を演じる竹野内豊松坂桃李もイケメンのイケメンらしい魅力的な部分と嫌な部分の表現が巧かった。
そして何より十和子に献身的に尽くす陣治の阿部サダヲがまあ素晴らしい。純真で優しくてどうしようもなく不器用な男の中に秘めた微かな狂気が見え隠れする演技が凄かった。


けどまあ、なんだ。真相とラストに関しては(ネタバレにつき略)という感じで、度肝を抜くようなアレでは無かった。けど、まあ切ないというかイタイというか、まあそんなお話になってますよ。(謎)
それと、タイトルになっている「鳥」については、ちゃんと説明されている訳では無いけど、まああのシーンのナニがアレの象徴的なソレなんだろうという感じ。(なんだそれ?)


ともあれ、ちょっとミステリー風味でイタくて切ないお話が好きに人にはかなりオススメ。あ、そうそう前述の役者さん達のファンだったりすると、かなりオススメ。