重苦しい3月

3月のライオン 後編 (http://www.3lion-movie.com/index.php)

MOVIX亀有にて鑑賞。
で、


3月のライオンって、こんな重苦しい話だったっけか?


という感じ。
一応原作は読んでいるし、話の粗筋的には(ラスト以外は)原作に有るエピソードを綴っているのだけど、どうにもこうにも重苦しくてしんどかった。
これもやっぱり前編の時といっしょで、息抜きになるようなコミカルなパートとコメディ・リリーフ的なキャラクターをバッサリ切ってしまった所為だと思う。
なので、全般的にイジメや、やっかいな近親者の辛い話と将棋という競技の苦しさみたいなので全編埋まっているので、最初から最後までずーっと息が詰まる感じ。
しかも、メッセージとして将棋という競技の楽しさを伝えようとしている台詞が有ったりもするんだけど、将棋に関しても重苦しい話が展開されているので、正直「楽しい」と言われても説得力に欠けていた。
むしろ、ここまで苦しい状況が有るにもかかわらず、それでも将棋が好きと言ってしまう人達に、ちょっとした狂気まで感じてしまった。


全般的には、前編で感じた違和感がより強調されてしまったので、微妙に感じていた「嫌な予感」が当たってしまった感じ。残念。


と、ここまで書いてきて思ったのは、原作のシリアスとコミカルの匙加減が如何に絶妙だったのかということ。やっぱり羽海野チカって凄いんだな。
ただ、これは原作を知っている私の視点からの見方なので、原作を一切知らないという人は、また別の印象を受けるかもしれん。


ともあれ、ちょっと原作を知っている身としてはクエスチョン・マークが着く出来でございました。残念。

違和感的攻殻機動隊

GHOST IN THE SHELL (http://ghostshell.jp/)

MOVIX亀有にて鑑賞。
で、


ハリウッド版の「ぼくの考えた攻殻機動隊」なのかな?


という感じ。
当然のようにベースに成っているのは押井守版の「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」。
なのだけど、要所々々で全く違う文脈で押井守版のシーンの丸コピーが挿入されてたりして、ちょっと面食らう。というか、押井版を観た人にとっては相当な違和感だと思う。
なので、個人的には終始頭にクエスチョンマークが点滅する感じで、ちょっと映画に入り込めなかった感が否めない。
で、これはネタバレになりそうだけど、根本的なテーマというか、何を是として何を非とするかの哲学が全く違う感じがした。にもかかわらず主人公の「少佐」は押井守的なセリフを言ったりするので、なんか言ってる事と映画全体のテーマが食い違ってる感じがして、これも違和感に拍車を掛けている感じがした。
それと、ラスト近くまで観て気がついたんだけど、これはアレかな押井版に繋がる「エピソード・ワン」を作りたかったのかも。とか思った。押井版の(良くも悪くも)悟りきった少佐と違って常に悩んで迷い続けてる少佐の姿は、これがエピソード・ワンだと思うと、割と合点が行く。とは言え、途中に押井版のシーンの丸コピーが挿入されているので、それもちょっと失敗している感じもした。
それと、ここまで押井守リスペクトでやるのだったらBGMはバリバリのハリウッド調じゃなくて川井憲次を使えば良かったのになぁ。


という感じで、けっこう押井守愛とハリウッド的文脈が捻れておかしな感じになってる様に観えたのだけど、その押井守監督が絶賛してた意味が分かった。ストーリーとか世界観とかアクションとかじゃなくて、某ガブリエル君(謎)のお陰だ。あの人はコレを出しておけば満足なんだよ、きっと。(笑)


あ、それとトグサの銃はマテバじゃなくてチアッパ・ライノだった。同じアンダーバレル・リボルバーなので外見は似てる(というか設計者が同じ)けど、違う銃です。*1


という訳なので、原作版とか押井版とか神山健治版とかを知っている人にはオススメできないけど、それらを全く知らない人には良いのかもね。個人的にはオススメしませんが。(笑)

*1:元ガンマニアのこだわり(笑)

帰ってきた悪ガキ

T2 トレインスポッティング (http://www.t2trainspotting.jp/)

MOVIX亀有にて鑑賞。
で、


ちゃんとトレインスポッティングで面白かった。


けど、前作を観てない人にはどうなんだろ? とも思った。
まあ、なんというか、全般的に前作ファンへの接待が凄い。前作と全く同じアングルのカットを使ったり、前作のシーンそのものをカットバックで挿入したり、登場人物達が街角で20年前の自分達の幻影を見つけたり、前作同様にシリアスな場面でもフィクショナルななカットがあったり、とまあ前作のファンが見た瞬間にニヤリとするような場面がてんこ盛りだった。
けど、それって前作を観てない人には「なんのこっちゃ?」なのかもしれん。
なので、前作を観ていない人は、DVDでネット配信でも良いけど前作を観ておくのが良いと思う。


でもって、内容はまあダメガキや悪ガキはオッさんになっても変わらないよね。と言う感じ。けど、今作の新ヒロイン(なのか?)のブルガリア出身(と言っていた)ベロニカのキャラウターがキュートかつ知的で良かった。で、その知的ってのも馬鹿なオッさんに合わせて一緒に馬鹿っぽく振舞っているけどその実は結構ちゃんと考えていたりするようなキャラクターになってて面白かった。ベロニカ役のアンジェラ・ネディヤルコヴァと言う人はオーディションで選ばれた人で他の出演作が見当たらないんだけど、この人ちょっと良いぞ。


で、前作ではさほど掘り下げて描かれてなかった記憶があるんだけど、レントンとシック・ボーイ(今回の偽名?はサイモン)は反発する描写が多いけど似た者同士な部分が多めに描かれていた。前作のトニーの死を引きずってるレントンと「修道院」で死んだ赤ん坊(恐らくシック・ボーイの子)の事を引きずってるシック・ボーイ。とっさに出まかせの口車でベグビーを諌めるシック・ボーイと口八丁で金を集めたり窮地を脱したりするレントン。ベグビーやスパッドと違って本当は地頭は良いという感じは面白かった。
そのベグビーは、えーと、まあロバート・カーライル太ったよな(笑)。という部分はともかく、直情的で凶暴で、やっぱりこういう人が側にいたら絶対に嫌だよなぁ(苦笑)。そして、今回凄く重要な役割を演じるスパッドは、20年たってもやっぱりボロボロのジャンキーなのだけど、まあ正直で良い奴になってた。この映画の世界では出てくる人は嘘つきばかりだけど、スパッドだけは常に正直で本当の事を言ってた(嘘をつく知恵が無いという事なのかもしれんが)。その正直さがラストに…(以下略)。
そうそう、前作で凄い美少女だったダイアンは意外な(でもない?)役で出ていた。一時ケリー・マクドナルドが「太ったおばさん」風になってたので心配だったけど、ちゃんと品の良い「元美少女の美女」になってて、ホッとしました(笑)。


ともあれ、前作を観た人は必見の映画であるし、前作を観てない人は前作を観てから観に行け!という映画。オススメ。

笑わないライオン

3月のライオン 前編 (http://www.3lion-movie.com/index.php)

MOVIX亀有にて鑑賞。
例によって原作は…読まないつもりだったのだけど、うっかり某所で既刊分は読んでしまった。 おまけにNHKで放送してたアニメ版も全話観てしまった。(苦笑)
なので、以下は何も知らないで観た人とは根本的に違うかもしれん。
で、


えらくシリアスに振り切ってるけど、ちゃんと「3月のライオン」だった。


という感じ。
とはいえ、まだ前編なので後編でどうなるかは判らんけど。
でもまあ、公式サイトのキャスト一覧を見ても松永七段や藤本棋竜等のコメディ・リリーフ的な人は出なさそうだし*1、前編では、原作で言うところの「コマに書き文字がギッシリ描かれている」ような場面も無かったので、コメディ要素は切り落とす算段なんだろうと思う。
けど、それがちょっと難しいなと思うのは、このお話、要所々々に笑いの要素が無いと結構キツイような気がするんだな。この前編だけだとそれほどでも無いけど、前編終了後の予告を観た限り、アノ話やアノ話は殆ど後編に持ってきちゃってるので、これは話が深刻すぎて観るのが辛くなりそうな気がして恐い。大丈夫だろうか?


と言うような不安は有るものの、将棋を主題にもってきた映画としては結構巧くできていると思う。将棋ファンから見るときっと色々と気になる部分はあるんだろうけど、将棋を一種スポーツとして描くような感じは結構良かったと思う。


あと、問題の(?)キャスト陣は配役も演技も結構ちゃんと原作を意識した感じで良かったと思う。特に佐々木蔵之介の島田八段は絶品。もう原作からし佐々木蔵之介を意識してたんじゃないかと思うくらいハマってて良かった。で、個人的に気になってたというか心配だった有村架純の香子は原作とはちょっと違う感じではあったけど、思ったほど悪く無かった。というか、このお話の中では香子のキャラクターって誰が演じたとしても一番難しいよな、とも思う。
ただ、ちょっと気になるのは「そろそろ神木隆之介の高校生役はキツイ」と思える部分(苦笑)。実年齢的にも有村架純の方が1歳くらい上だったと思うけど、どうもこの二人が一緒にいると有村架純の童顔もあって、姉弟じゃなくて兄妹に見えてしまって困った。あと、神木くんはずっと変なカツラを被ってるようにも見えて、これも困った。(苦笑)


ともあれ、思ったよりもちゃんと「3月のライオン」だったので原作ファンが観ても、それほど強烈な違和感は無いかと思う。逆に原作を知らない人だったらどうなんだろう? と思う部分はあるけど、まあ映画としてそこそこ面白く出来ていると思うので、とりあえずオススメ。

*1:松永七段は絶対でんでんが演じるべきだと思ってました。(笑)

信徒という人達

沈黙 -サイレンス- (http://chinmoku.jp/)

MOVIX亀有にて鑑賞
で、


重い。(苦笑)
そして、欧米と日本の宗教観の違いが非常に興味深い。


まあ全編を通して不穏でイヤな感じが結構続くので、まあ重い。けど、ストーリーそのものはシンプルなのだけど巧妙に観客を「考えさせる」演出が多くて、2時間半を超える長めの映画にも関わらず、最後まで引き込まれた。なかなか凄い。
で、その考えさせられる部分が前述の宗教観の違いだったりすのだけど、劇中の様な仕打ちを受けてまで信仰を捨てなかった信者のキリスト教感って、どんなんだったろうね? とか思った。
ぶっちゃけ、神父達が伝える為にもってきたカトリックキリスト教の教えと、日本に居た信徒の思想って、微妙にズレてて、主人公達もロザリオを偶像として崇拝する人達に戸惑ったり、信徒の言う「パライソ」が仏教的な極楽浄土の代用として捉えられていて、キリスト教的本来の楽園思想を伝える事が出来なかったりして、結構グズグズになっちゃってる。しかし、それを信じて疑わずに命までかけてしまったりする部分は結構考えさせられる。
さらに、物語中数回出てくる禅問答的な宗教論議が結構面白い、というか興味深い。
そして、当時の日本人を一方的に(宗教的な)悪魔として扱わずに「残虐はであるが無知蒙昧で無学な人達では、ない」という描写が興味深い。キリスト教者にとっては、もっと無知で野蛮な悪魔であってほしい筈なのだけど、そこはそうしない。興味深い。


で、これは原作がそうなのだろうけど、ちょっと気になったのが所謂「踏み絵」の扱い。キリスト教本来的には偶像崇拝は慎む(宗派によっては禁忌ですらあると思う)べきなのだけど、踏み絵という偶像を踏む事に神父達が躊躇うのが正直、良く分からなかった。踏むのを躊躇うのは偶像崇拝を逆説的に認める事になりはしないのだろうか? とか、ちょっとだけ気になった。


正直、この映画はその人の宗教観によって結構違った風に見えるんじゃないかと思う。個人的には前述の通り、信徒の気持ちが今ひとつ理解し辛い部分があった。
なので、コレ、敬虔なカトリックプロテスタント、あるいはイスラム教やユダヤ教、仏教等の信者の人達にとってどう見えるのかが、ものすごく気になる。というか知りたい。


ともあれ、映画としては非常に良く出来ていて日本人俳優の演技も素晴らしいので、かなりオススメ。

電気と家族と自転車と?

サバイバルファミリー (http://survivalfamily.jp/)

MOVIX亀有にて鑑賞。
で、

わりと震災映画だった。


そんな感じ。
シン・ゴジラ君の名は。の創作の背景に東日本大震災による被害の記憶がバックボーンとして有るように、この映画は震災直後の電力パニック時の話がバックボーンになってた。
ある日突然、全ての電気製品や電気を使用したすべての器機、それも電池駆動や電気的な反応を使用した器機も含めて、全ての「電気」が失われてしまう。というSF的な事象と、それによる市井の人々の反応の話なので、J.J.エイブラムスやギャレス・エドワーズが撮ったら、間違いなく大スペクタクル・パニック・ムービーになってしまうところなのだけど、そこはそれ、舞台が日本だったり監督が矢口史靖だったりするので、一般の家庭、それも「家族」の有る意味「再生」の話になってたりする。そう、だからタイトルは「大停電」でも「電気消失」でもなく「サバイバルファミリー」なのだった。
にしても、この一家の有りそうで愉快で悲しい感じが、おそらく何処の家庭でも有っておかしく無い絶妙な話になってて面白い。特に中盤に出会う自転車一家(?)との邂逅で、アウトドアでDIYな人と都会で電気まみれの人の対比がこれでもかと強調されているのは結構笑える。(しかし、都会暮らしの主人公一家もちょっとした知識で危機を脱する場面もあったりするので、それはそれで面白くも有る)
でもって、序盤で電気が無くなる事による事象も「あ、これもダメか、あれもダメか」の連続で結構考えさせられる。そして中盤以降の「電気が無くてもコレなら!」的な話に転換していく辺りは、かなり面白く観られる。巧い。


ただ、ちょっと意地悪な事を言うと、本当にこの映画の事象が起きてたら、それは相当な大災害であって、相当な数の人が死んでる筈。どこかで飛行中の飛行機は間違いなく落ちるだろうし、劇中でさり気なく「止まった」とされている福井の発電所(言及されていないが原発だろう)が、ただ止まっただけでは全然安全ではなく、それも電源が失われたらどんな悲劇が訪れるのかは、今や日本中の人が知ってる。映画としてそこにリアリティを持ってきていたら、日本が無くなるレベルの大災厄ムービーとなっている筈。
けど、劇中では、あくまでも徹底して「家族」の行動を追っているので、そう言う部分は気にせず観られるようにはなっている。と思う。


あと、もう一つ興味深かったのは、犬という生き物の扱い。主人公一家は物語の序盤と終盤に犬と遭遇(序盤は姿が見えないのだが)する部分はちょっと象徴的かつリアルで心が痛んだ。そうなんだ。動物を飼うなら最後まで面倒みなきゃ駄目なんだよ。(謎)


ともあれ、いつもの矢口史靖監督作品と同じく、家族揃って楽しめるタイプの良作でございました。オススメ。

フォース無き戦場

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー (2D字幕) (http://starwars.disney.co.jp/movie/r1.html)

ユナイテッドシネマ豊洲にて鑑賞。
で、


スター・ウォーズの世界を借りた戦争映画


という感じ。
てか、ほぼスター・ウォーズ感が無い。(苦笑)
むしろ。兵士たちが持ってる銃がM16ライフルやAK47じゃないのが不思議なくらいだ。と思うくらいベトナム戦争感が有る。(ただし「プライベート・ライアン」や「ブラックホーク・ダウン」みたいなアレな描写は無い*1。)
たぶん、この映画が描きたかったのは、エピソード4の前の「フォースの無い時代の戦争」の姿だろうと思う。なので、シリーズの他の作品程に様式美的なチャンバラは、ほとんど無い。唯一ドニー・イェン演じるチアルートが杖で戦うシーンだけはチャンバラというか座頭市感が有るくらい。といっても、チアルート自体はフォースの無い時代にフォースに憧れて修行してきた僧なので、フォース・ワナビーゆえのチャンバラなのだけど。


スター・ウォーズの1エピソードというよりは戦争映画として観ても結構面白いのだけど、ちょっと気になる演出が結構あって、そこはちょっと残念。例を挙げると「機械のコントロール・パネルが何故そんな場所にあるの?」と思うシーンが複数(!)有ったのは困ってしまった。(苦笑)
それ以外にも物語を盛り上げる為だけ(と思われる)演出がチラホラ見えたのも気になってしまった。
とは言え、エピソード4を知ってい観客目線で観ると結末は分かっている…にもかかわらず結構手に汗握る感は結構有る。そして、スター・ウォーズの世界の行く末を左右する重要な作戦の最期にちょっとグッとくるモノもある。(詳細は略)


ともあれ、「フォースの覚醒」から始まった「非ルーカスのスター・ウォーズ」の別編としてはそこそこ良かったんじゃないかと思う。そこそこオススメ。

*1:流石に子供も観る映画だからね

帰ってきた苦虫女(?)

アズミ・ハルコは行方不明 (http://azumiharuko.com)

ユナイテッドシネマ豊洲にて鑑賞。
で、


今年最強のガールズムービー。


という感じ。
内容的には一応の主人公「安曇春子」の失踪前と、失踪後を並行して同時進行的に描くのだけど、その失踪前、失踪後の中でも時系列をシャッフルさせるという中々凝った作りの映画。で、そのシャッフルさせた中では、無差別に男性を襲撃する女子高生集団、20歳で町中にグラフィティをペイントしまくる女性、どーしよーもない会社でOLをやってるアラサーの女性、という3つの世代の女性が交錯する、さらに凝った作りになってたりする。
観てると時系列を整理するのに結構頭を使うのだけど、それが割と不快じゃなくて、物語に没入させる効果が有ってかなり面白かった。


で、まあ、なんというか、道を歩いても買い物に行っても否応無しに同級生に会ってしまう「地方都市から出ていけなかった人達」の閉塞とか鬱屈とか恋愛とか結婚とか、ちょっとダウナーなエネルギーが凄い感じ。でもって、それをブチ壊す女子高生軍団(?)のパワーが凄い。
生まれも育ちも東京だったりすると共感し辛い面が無いではないけど「ああ、そうか地方都市で生まれてそこから抜け出さなかった人はこういう事なのか…」とか、ちょっと感じる部分は相当有って、これはちょっと興味深かった。
ぶっちゃけ、グラフィティも男性を襲撃する事も犯罪だったりするので共感はできなかったのだけど、まあ閉塞感をブチ壊す為のツールみたいな感じだった。


主演の蒼井優はなんとなく「百万円と苦虫女」の主人公が何者にもならずに地元に帰ってきてなんとなくOLになっちゃったみたいな感じで、件の映画が好きだった私からすると、ちょっと懐かしくて面白かった。で、もう一人の主演とも言える高畑充希出世作の「とと姉ちゃん」とは全く違った、ちょっと思慮の浅い感じの20歳のギャルを楽しそうに演じてて良かった。ただ、NHKでしか彼女を知らない人は結構面食らうかも。(苦笑)


ともあれ、ぶっちゃけて言うと私のような中年男向けの映画ではないのかもしれないけど、私個人は非常に楽しく観れた。なので、この映画は10代〜30代位の女性、それも地方都市で生まれ育った人にとっては、私なんかよりもずっと来るモノが有ると思う。この映画はもうちょっと話題になっていい。オススメ。

憑依とコスプレと将棋と

聖の青春 (http://satoshi-movie.jp/)

ユナイテッドシネマ豊洲にて鑑賞。
で、


松山ケンイチ、また怪演。


という感じ。(苦笑)
いや、本当に憑依系と言うか、顔は全く似ていないのに、松山ケンイチがちゃんと村山聖に見えた。特に将棋盤の前で目を据える姿はちょっと鳥肌モノだった。
対する東出昌大演じる羽生善治も、まあかなり羽生善治に見えてくる。やっぱりこれも将棋盤の前で頭掻きむしってる姿が特に。
けど、松山ケンイチが憑依だとするなら東出昌大はまだコスプレっぽい感じが抜けない印象は有った。それでも、正直「大根」だと思ってた東出くんをちょっと見直した。まあ、羽生善治という人自体があまり感情を露わにするタイプの人ではないという部分が合っていたのかもしれんけど。


この映画、事実と違う描写が結構有るようなので*1、これをそのまま村山聖伝として観るのはちょっと問題が有るかもしれないけど、将棋に対する気迫というかオーラの様なものはちゃんと表現されていて良かった。


それと、映画全体としては、対局のシーンの緊張感が凄く良かったのだけど、要所々々で挟まれる自然や庭などの風景シーンが、ちょっと効果的とは言えない感じで、正直時間を埋める為に入れたシーンに見えちゃう部分がちょっと残念な感じはした。


ともあれ、ちょっと将棋に興味が有ったり、村山聖という棋士を知っている人には結構オススメ。

*1:たぶん、村山聖羽生善治がサシで飲むシーンは創作だと思う。誰が観てたんだよコレ?という感じだもの。

それでも日常は続く

この世界の片隅に (http://konosekai.jp/)

MOVIX亀有にて鑑賞。
例によって原作は読んでいない。
で、

これは究極の日常系アニメ。

だと思った。
(当時としては)平凡な日常が次第に蝕まれていき、そして壊れてしまった後も、やっぱり日常は続くのだ。という事をテーマにしている様に観えた。
太平洋戦争、それも呉空襲と広島原爆投下を描いてはいるけど、本質は反戦を描きたいというよりは、壊れていく日常の象徴といった印象を受けた。なので、これは時代を現代に変えればきっと震災を背景にしても同じような物語を紡げるのではないか? とも思った。
そう、大きな悲劇の後でも人は笑ったり泣いたり怒ったり怒られたりしながら生きていくし、大きな悲劇の後でも格好良い水兵さんの話で盛り上がったりする。人は悲しみ続けて生きてはいけない。そう思う。

というテーマとは別に、この映画、細部の作り込みも凄い。序盤に登場する戦艦大和の描写や、呉空襲の尖兵として飛来するP-51マスタングの描写も時間が短いのに(P-51なんかチラっとしか映らないのに)、実に緻密に描かれている。
そして、広島の原爆投下の描写でも、これは今まで見たことなかったのだけど、広島の中からではなく、隣町(?)の呉ではどう捉えられていたのかの描写が実に緻密かつリアルで興味深かった。

それと、キャストののん(能年玲奈)が良かった。冒頭で語られるように、ちょっと「ぼうっとした少女」をそして後には「何が起きても生きていく力強い女性」を完璧に演じていて素晴らしかった。

で、この映画エンドロールに仕掛けがあるので、劇場が明るくなるまで席を立ってはいけない。エンドロールが本編で描けなかった後日譚にないるのだ。さらにもう一つのエンドロール(?)では、本編で割愛された(と思う)重要な登場人物を描いたサブストーリーが描かれている。これはこれで必見。

そうそう、これは批判ではなく、むしろ褒めたいんだけど、劇中で当時の時代背景や風俗が描かれているのに、細かい説明が一切無い。これは当時の知識が全く無いとちょっと辛いかもしれないけど、それを一々やってしまうと説明だけでほぼ全編になってしまって、肝心な部分がボヤケてしまうと思うので、英断だと思う。*1

ともあれ、かなりの傑作で大オススメなので、これは観るべき。と言うか、観ろ。

P.S.:
それにしても、今年は邦画は記録的な大豊作。例年だったらベストに選べるような作品がとても多いね。

*1:例えば白木リンの働いている店は本編では全く説明が無く。公式サイトでは「遊郭」となっている。でも、あれは「カフェー」(当時の喫茶店風俗営業)っぽかったな。