電気と家族と自転車と?

サバイバルファミリー (http://survivalfamily.jp/)

MOVIX亀有にて鑑賞。
で、

わりと震災映画だった。


そんな感じ。
シン・ゴジラ君の名は。の創作の背景に東日本大震災による被害の記憶がバックボーンとして有るように、この映画は震災直後の電力パニック時の話がバックボーンになってた。
ある日突然、全ての電気製品や電気を使用したすべての器機、それも電池駆動や電気的な反応を使用した器機も含めて、全ての「電気」が失われてしまう。というSF的な事象と、それによる市井の人々の反応の話なので、J.J.エイブラムスやギャレス・エドワーズが撮ったら、間違いなく大スペクタクル・パニック・ムービーになってしまうところなのだけど、そこはそれ、舞台が日本だったり監督が矢口史靖だったりするので、一般の家庭、それも「家族」の有る意味「再生」の話になってたりする。そう、だからタイトルは「大停電」でも「電気消失」でもなく「サバイバルファミリー」なのだった。
にしても、この一家の有りそうで愉快で悲しい感じが、おそらく何処の家庭でも有っておかしく無い絶妙な話になってて面白い。特に中盤に出会う自転車一家(?)との邂逅で、アウトドアでDIYな人と都会で電気まみれの人の対比がこれでもかと強調されているのは結構笑える。(しかし、都会暮らしの主人公一家もちょっとした知識で危機を脱する場面もあったりするので、それはそれで面白くも有る)
でもって、序盤で電気が無くなる事による事象も「あ、これもダメか、あれもダメか」の連続で結構考えさせられる。そして中盤以降の「電気が無くてもコレなら!」的な話に転換していく辺りは、かなり面白く観られる。巧い。


ただ、ちょっと意地悪な事を言うと、本当にこの映画の事象が起きてたら、それは相当な大災害であって、相当な数の人が死んでる筈。どこかで飛行中の飛行機は間違いなく落ちるだろうし、劇中でさり気なく「止まった」とされている福井の発電所(言及されていないが原発だろう)が、ただ止まっただけでは全然安全ではなく、それも電源が失われたらどんな悲劇が訪れるのかは、今や日本中の人が知ってる。映画としてそこにリアリティを持ってきていたら、日本が無くなるレベルの大災厄ムービーとなっている筈。
けど、劇中では、あくまでも徹底して「家族」の行動を追っているので、そう言う部分は気にせず観られるようにはなっている。と思う。


あと、もう一つ興味深かったのは、犬という生き物の扱い。主人公一家は物語の序盤と終盤に犬と遭遇(序盤は姿が見えないのだが)する部分はちょっと象徴的かつリアルで心が痛んだ。そうなんだ。動物を飼うなら最後まで面倒みなきゃ駄目なんだよ。(謎)


ともあれ、いつもの矢口史靖監督作品と同じく、家族揃って楽しめるタイプの良作でございました。オススメ。