信徒という人達

沈黙 -サイレンス- (http://chinmoku.jp/)

MOVIX亀有にて鑑賞
で、


重い。(苦笑)
そして、欧米と日本の宗教観の違いが非常に興味深い。


まあ全編を通して不穏でイヤな感じが結構続くので、まあ重い。けど、ストーリーそのものはシンプルなのだけど巧妙に観客を「考えさせる」演出が多くて、2時間半を超える長めの映画にも関わらず、最後まで引き込まれた。なかなか凄い。
で、その考えさせられる部分が前述の宗教観の違いだったりすのだけど、劇中の様な仕打ちを受けてまで信仰を捨てなかった信者のキリスト教感って、どんなんだったろうね? とか思った。
ぶっちゃけ、神父達が伝える為にもってきたカトリックキリスト教の教えと、日本に居た信徒の思想って、微妙にズレてて、主人公達もロザリオを偶像として崇拝する人達に戸惑ったり、信徒の言う「パライソ」が仏教的な極楽浄土の代用として捉えられていて、キリスト教的本来の楽園思想を伝える事が出来なかったりして、結構グズグズになっちゃってる。しかし、それを信じて疑わずに命までかけてしまったりする部分は結構考えさせられる。
さらに、物語中数回出てくる禅問答的な宗教論議が結構面白い、というか興味深い。
そして、当時の日本人を一方的に(宗教的な)悪魔として扱わずに「残虐はであるが無知蒙昧で無学な人達では、ない」という描写が興味深い。キリスト教者にとっては、もっと無知で野蛮な悪魔であってほしい筈なのだけど、そこはそうしない。興味深い。


で、これは原作がそうなのだろうけど、ちょっと気になったのが所謂「踏み絵」の扱い。キリスト教本来的には偶像崇拝は慎む(宗派によっては禁忌ですらあると思う)べきなのだけど、踏み絵という偶像を踏む事に神父達が躊躇うのが正直、良く分からなかった。踏むのを躊躇うのは偶像崇拝を逆説的に認める事になりはしないのだろうか? とか、ちょっとだけ気になった。


正直、この映画はその人の宗教観によって結構違った風に見えるんじゃないかと思う。個人的には前述の通り、信徒の気持ちが今ひとつ理解し辛い部分があった。
なので、コレ、敬虔なカトリックプロテスタント、あるいはイスラム教やユダヤ教、仏教等の信者の人達にとってどう見えるのかが、ものすごく気になる。というか知りたい。


ともあれ、映画としては非常に良く出来ていて日本人俳優の演技も素晴らしいので、かなりオススメ。