芝居と虚構と現実と

塀の中のジュリアス・シーザー (http://heinonakano-c.com/)

銀座テアトルシネマにて鑑賞。
で、


えらいこと面白い。


映画の内容は、イタリアの刑務所内の舞台で受刑者達によって上演されるシェークスピア劇「ジュリアス・シーザー」の上演までのドキュメンタリー。けど、ぶっちゃけ本番の舞台で上演される演劇よりも稽古と称して刑務所内の各所で演じられる芝居の方がメイン。
で、ドキュメンタリーとは言っても、ちょっと変なテイストがある。確かに映画の最初はドキュメンタリーの体裁で始まるのだけど、刑務所内各所での稽古が始まるとメタ・フィクションとフィクションの境目で両方を言ったり来たりするような演出がされている感じの不思議な映画になる。
出演者である受刑者が明らかにカメラに向かって喋っていたり、出演者が歩いて室内に入る場面で後ろ姿のカットと部屋の中から入ってくる様子を映したカットに割って、明らかに複数回に分けて撮っているのが判る部分もある。これって、わざわざ演出をつけて複数回同じ事をやってもらってるという事だからドキュメンタリーとして反則に近い、というか私のドキュメンタリー感としてはモロに反則。けど、そこで展開される芝居がとても演技の素人がやっているとは思えない程水準が高くて素晴らしいので、その反則感を補って余りある感じ。
特に、ブルータス役の人の役へののめり込み具合あ凄くて、ちょっと見てて心配になるレベル。いや凄い。
そして、本番の舞台が終わると、また元の受刑者の生活に戻っていくのだけど、そのラストでキャシアス役の人の一言が、彼らの置かれている現状と演劇に出会えた喜びとそれが遅すぎた後悔が入り交じって、ぐっと来る。この台詞を言う部分はぶっちゃけ演出入ってる感じなのだけど、おそらく彼の本音であろう台詞のリアリティがそれを覆い隠すぐらい凄かった。
おまけとしてエンドロールに一部の演者達の「その後」が字幕で表示されるのだけど、これも「ああ、なるほど。そうなるよね」と言う感じ。ここも必見。


と言う訳なので、当然大オススメ。
上映期間はもうすぐ終わりそうだけど観ておいて損は無い。と言うか観ろ。