現実側の彼女達

パンドラの匣 (http://pandoranohako.com/)

勝手知ったるテアトル新宿にて鑑賞。
原作は読んでないのだけど…いやー、凄く太宰だ。
結核の療養所の話なのだけど、いわゆるサナトリウムというよりは男ばかりの合宿(名前は「健康道場」)という感じ。
物語は徹底して、健康道場の塾生(患者)の男達と、看護婦の女達という対比で語られる。
療養生活を楽しく過ごそうとする男達も、戦争に負けたと言って深刻ぶって生活しようとする男達も、そしてその二つのタイプの男達の対立も、結局は結核による死と言う現実から逃げているように見える…のに対して、女達は常に現実側にいるという感じ。表面的には男が女達に翻弄されるという話なのだけど、現実に向き合っていないのは結核の男達で、翻弄しているように見えても女性は常に現実側に居る。うーん、凄く太宰的。
主演は「ひばり」を演じる染谷将太であり、「竹さん」を演じる川上未映子なのかもしれないけど、「マア坊」を演じる仲里依紗の演技が凄く良かった。常に人懐っこく振る舞う子犬のようでいながら、内心は女として思うところもあって、さらに(当時としては)かなり進歩的な考え方を持っている女性。という難しい役だと思うのだけれど、それをちゃんと演りこなしていて凄く巧い。


ともあれ、どーんと大事件の起こる様な映画ではないけれども、最後まで面白く見させていただきました。
結構オススメ。