差別語の作り方

のび太のくせに!」誕生秘話(http://www.enpitu.ne.jp/usr6/bin/day?id=60769&pg=20051008)

はてな注目URLに上がっていたので読んでみた。
以下はかなり暴論なので、眉にツバして読んでいただきたいのだが…。


大山のぶ代さんは全く気づいていないが、これはつまり「差別語の作り方」だな。
つまり対象に罵倒するのではなく、対象を示す言葉に悪意を込めてしまうということ。
いや悪意というより呪いをかけると言った方が正確かもしれない。*1
たとえば、「部落」という言葉が有る。この言葉自体には本来差別的な意味は無かった。ウチの母親は東京の下町生まれなのだが、幼い頃に栃木県に疎開していた。その頃の話になると「当時は部落対抗で運動会をやって…」などと、ごく普通に「部落」という言葉を「集落」や「村落」と近しい意味として使っている。この言葉に差別語的な意味を付けてしまったのは「被差別部落出身者」という言葉の略語(おそらく最初は隠語)として「部落モン」と読んでいたのが元だ。それがいつのまにか「部落=被差別部落」になってしまい、「部落」が差別語として認識されるまでにいたった。オーバーな言い方をすれば、言葉に呪いをかけて使えなくしたと言っても良い。
逆の例だと、英語の "Black" が有る。長い間黒人を指す差別語として使われてきた言葉だったのだが、 "Black is Beautiful." に代表されるような言い回しによって、ポジティブなイメージを植えつける事に成功した。今では差別語ではなく黒人全般を指す普通名詞になっている。
最初ののび太の例で言うと、「のび太のバカヤロー」と言う代わりに「のび太の癖に」と言い換える事によって「のび太」という言葉に呪いをかけてしまうという事。そのうちのび太以外の人に対して「バカヤロー」の代わりに「やーい、のび太ー」と言うようになれば、呪いは完成され差別語として機能し始めたと言っていい。
本人は無意識(しかも善意)でしている事なのだろうが、言葉を司る商売の人であれば自分が差別語を作る手法と全く同じ事をしているという事実には気付いて欲しい。

*1:日本には言霊という言葉がある。