良い映画と嫌な気分

疑惑のチャンピオン (http://movie-champion.com/)

シネ・リーブル池袋にて鑑賞。
で、


うーん、ちと複雑な気分。


てな感じ。
いや、映画その物の出来と言うより、個人的な心情の問題。
映画そのものは、かなり良く出来てる。1990年代から2000年代のレースの場面は要所々々で実際の映像を混ぜ込む形で作られているけど、そこは違和感なく作り込まれてて、まあ良く出来てる。自転車マニア的な視点だと当時の自転車をよくこれだけの数用意したな、という感もある。*1
そして、まあ100分程のに巧く刈り込まれたストーリーはテンポも良くて、最初から最後まで飽きさせない。


で、個人的な心情の問題というのは、確実に当時のレースを見ていた事による、同時代性と言うか「立ち会ってしまった」感が拭えないと言う事。
物語の中でほぼ名前しか出てこない「タイラー(・ハミルトン)」とか、露骨に脅されていたシメオーニとか、映画のキーマンとなっているフロイド・ランディスとかが完全に実名で出てきて、それがまた裏でいろいろ有ったり…という部分を描かれているのを見ると当時を思い出して、まあ実に複雑な気分になる。


と言っても、正直ランス・アームストロングという選手の事は


ぶっちゃけ嫌いだった。(笑)


一応ロードレーサーとしてはハンサムな部類に入る方かもしれないけど、まああのロボットの様なわざとらしい笑顔と「全く笑っていない目」が、とてもイヤな感じがしていた。そして何より自分一人の為にアシストを完全に「使い捨て」にするようなレーススタイルは本当に嫌いだった。
むしろ、強さを持ちながら、時として大失敗したり太りすぎてシーズン序盤はでっぷりした体で走っていたヤン・ウルリッヒの様な選手にレーサーとしてというより人間として好ましく思っていた。ウルリッヒは総合成績に影響の無いステージではチームメイトのアシストの為にトレインを組む事すらあったけど、ランスがチームメイトの為に走っていたシーンは記憶に無い。(尤も、そのウルリッヒもドーピング疑惑でロードレース界を逐われるのだが…)


なので、映画の内容的には「さもありなん」と言う感じもするんだけど、その後多くの人が思っていたほど彼が断罪されていない事も知っているので、まあ嫌な気分になる。
彼が疑惑を打ち消す為に叩き潰してきた多くの選手やマスコミや関係者の事を思うと、正直胸糞悪くなる。


なので、映画の出来としては非常に良く出来ているのだけど後味は、とても悪い。


という事を踏まえた上でならオススメ。(笑)

*1:古いロードバイクを所有している人は結構多いけど、それらは「使い込まれていてボロボロ」か「ほとんど使われずにピカピカ」の2種類が殆ど。前者は撮影に耐えられないし、後者はまず提供してもらえない(笑)。