かの岸へ

岸辺の旅 (http://kishibenotabi.com/)

テアトル新宿にて鑑賞。
で、


不思議な映画。


だと思う。
導入部は、黒沢清監督らしいJホラー風味。けど、次第に妻が「帰ってきた」夫を受け入れて来るにつれて、自称「死んだ」夫が生者よりも人間らしく、そして二人は夫婦らしくなっていく感じ。良い。
で、夫が妻を自らが彷徨していた場所を連れ歩き、各所で生者と死者に触れていくにつれて、いずれ訪れる「その時」を理解していく。その過程が観ているこちら側と見事にシンクロすしていく。なので、観客は完全に妻の視線と考えが理解できて、(ちょっとリアリティラインが低いにも関わらず)すんなりストーリーを受け入れることが出来る。巧い。
なんとなく、生者と死者の物語が大島弓子的な感じがしないでもない。というか、この原作の人って大島弓子好きそうだな。とか思った。(勝手なことを言ってます)
で、中盤で深津絵里蒼井優が対峙するシーンがあるんだけど、このシーンだけ、完全に「こちら側」な感じがしてちょっと異質なのだけど、その異質さは本当は「死んだ」夫との旅の方なのだと気付かせてくれもする。巧い。それにしても、この二人の対峙するシーンはヒリヒリして怖い(苦笑)。いや、こういう場には同席したくないなぁ(謎)。


一つだけ、ちょっと気になったのが「きれいな場所」の景色をちゃんと見せてくれるシーンが少ない事。ラストのあの場所くらいは、もうちょっと時間をかけてじっくり見せてくれても良いような気がするんだけどね。


ともあれ、静かで一見退屈に見える映画なのだけど、妻の視点にシンクロできると、いろんな事がグワッと脳内に染み込んでくるような、不思議な体験が出来る感じで、とても面白かった。オススメ。