服飾ファンタジー

繕い裁つ人 (http://tsukuroi.gaga.ne.jp/)

ヒューマントラストシネマ有楽町にて鑑賞。
で、


良い感じの服飾ファンタジー


と言う感じ。
ぶっちゃけてしまうと、所謂食堂ファンタジー系の話を服飾関係に変えたという感じで、まあ有りがちと言えば有りがち、ではある。
祖母の洋裁店を引き継いぎ頑なに祖母の築いたスタイルを変えない二代目店主と、その製品をブランド化しようとするデパート職員が、それぞれほんの少しだけ変わる瞬間を描いた感じで、あえて劇的に変えていない辺りに好感が持てる。
さらに、主演の中谷美紀が(こう言う言い方は失礼なのだが)良い感じでおばさん化しているのだけど、ふとした時に魅せる姿、寝起きのパジャマ姿やチーズケーキを食べる仕草、紅茶の茶葉をぶちまけた瞬間等、とてもキュートで、凄く良い。なんと言うか、こうい人が「かわいい大人の女性」なのだな、とか思う。
それと、日本映画に有りがちな「安易に恋愛ドラマに逃げる」感じがしないのが良い。人間、そんなにしょっちゅう惚れた腫れたやってる訳じゃないんだよ。*1
あと、特筆すべきなのは、舞台となっている南洋裁店に集うおじさん、おばさん達が凄く良い顔をしている事。もう、なんか本当に良い顔を集めたなぁ。という感じ。
ちょっとだけ気になるのは、いくらお洒落な神戸の街を舞台にしているとは言っても、登場人物がちょっと品の良い人ばかりというきらいは有る。ほんの1カットだけ関西の庶民の生の姿(?)が見られる部分もあるのだけど、それ以外は、本当に品の良い人ばかり。そこがまたファンタジー的な部分で良いのかもしれないけど、庶民的な部分をもっと出した方が後のシーンとの落差が大きくなって良かったかも。
と言うか、本当の神戸の人って関西弁だよね?(違う?)


あと、これは個人的な事だけど、私の両親はずっと縫製業を営んでいたのでミシンとか裁ち鋏とか服を作る工程とかは、とても懐かしく観られた。もっとも、ウチに有ったのは電気釜くらいの大きさのモーターが付いた爆速のミシンでバルカン砲のようなスピードで極めて正確に服を縫っていたので、この映画を両親に見せたら「遅い」とか「雑」とか「下手」とか言われそうな気もしないではない。(苦笑)*2


ともあれ、良い感じの服飾ファンタジーとして、けっこう丁寧に作られた佳作では有ると思う。オススメ。

*1:と思ってるのは私だけ?(笑)

*2:ウチの両親は、NHKの朝ドラ「カーネーション」を観て「実際の洋服屋の仕事はあんなに簡単じゃない」と文句を言っていたらしい。プロは何かとウルサイ。(笑)