人は悪意よりも善意によって、狂う(?)

紙の月 (http://www.kaminotsuki.jp/)

ユナイテッドシネマ豊洲にて鑑賞。
例によって原作は読んでいない。
で、


思ったよりも娯楽作品になってて面白かった。


と言う感じ。
吉田大八監督作品と言うと、どうしても「桐島、部活やめるってよ」と比較してしまうのだけど、今回は「桐島、…」の時ほどリアルで重い話にはしていない感じ。
なので、「桐島、…」程の息苦しさは無い。
いや、むしろ主役の梨花と不倫相手となる光太が駅で接近する、ある意味「一線を越える瞬間」のシーンは、ちょっとしたBGMとスローで盛り上げて、ちょっとしたラブストーリー風でもある。
さらに、梨花が横領に手を染める瞬間、つまりこれも「一線を越える瞬間」は、やはりスタイリッシュなBGMとスローで盛り上げたりする。
ちょっとクライムサスペンス風で格好良い。
という位にエンターテイメント風になってはいるのだけど、そこはそれ、内容的には実際の幾つかの横領事件をモデルにしただけあって、それなりの緊張感は有る。と言うか、事件が徐々に大きくなって行く過程は、ちょっとしたホラーっぽくも感じる。って、それもまた、別のエンターテイメントか。
そして、ラスト付近に横領犯である梨花と、小林聡美演じる堅物で非常に厳しい銀行員の鏡みたいな隅より子との対決シーンは息を飲む緊張感と迫力が凄い。そして怖い。
そして、その後の(以下省略)もまた凄い良いシーンになってて、これまた格好良い。
主演の宮沢りえは決して悪意ではなく、むしろ善意で狂っていく横領犯の演技が良かった。しかしそれ以上に小林聡美が凄い。怖い。そして、確実に「こういう人、居る!!」感じが凄まじい。
ついでに、光太役の池松壮亮も最初はちょっとダサめの貧乏学生風味だったのが、梨花がもたらす金によって、どんどん派手でチャラくて嫌な感じになっていく表現が凄く巧い。最初の貧乏学生の部分は「愛の渦」でも観てて、それと同類の感じだったんだけど、その後の表現は初めて見る感じで面白かった。こういう役もやるんだなぁ。とも思った。*1


ともあれ、個人的に割と不作だった今年の映画の中では、割と必見の方だと思う。かなりオススメ。

*1:けど、まあ何だ「愛の渦」「海を感じる時」そして「紙の月」と、「そういう役」が続いている感は有る。うらやましい。(マテ)