人と祖国

かぞくのくに (http://kazokunokuni.com)

勝手知ったるテアトル新宿にて鑑賞。
で、


酷い話だけど…良い映画だなぁ。


という感じ。
北朝鮮という国の非情で理不尽な部分を淡々と描いていて、とても重い。そしてベースとなった話は監督自身が体験した実話なので、単純に面白いと言うのは躊躇われるのだけど、とても良い映画である事は間違いない。
病気治療の為に一時来日した兄ソンホは自らにふりかかる事象を(見かけ上は)淡々と受け入れ、日本で育った妹リエは常に「祖国」の理不尽さに苛立つ。「祖国」の振舞いの為に自身のしてきた事に自信を失いつつある父、ただ息子の安全を願う母、一見強権的にも見えるが実はソンホとさほど違わない立場の監視役。これらの人達の対比が見事で、これらの人達を描く事によって「祖国」の姿が浮き出るようになってたりする、とても巧い作り。
さらに、非常に細かい部分での演出がとても巧い。ソンホと母が対面した時に監視役がほんの一瞬*1だけ見せる仕草や、コーヒーを飲む時のほんのちょっとした振舞いとか、まあとても細かい所まで丁寧に作ってあるみたいで、とても好感が持てる。たぶん、何度も観ればもっと色んな部分に気付くんじゃないかと思う。
しかし、ヤン・ヨンヒ監督はドキュメンタリー出身という話だけど、こういう細かいところまで演出するというのは、ちょっと驚く。というか、元々ドキュメンタリーよりも作り込んだフィクションの方に才能の有る人なんじゃないかな?


話の内容が内容なので面白いと言ってしまうと怒られるかもしれないけど、やっぱり映画としてちゃんとしていて面白い。


という訳なので、絶賛大オススメ中。右の人も左の人も北の人も南の人もこの映画を観れば良いと思う。

*1:本当に一瞬