不穏の山

セイジ ー陸の魚ー (http://seiji-sakana.com/)

久々のテアトル新宿にて鑑賞。
例によって原作は読んでいない。
ストーリーその他は公式サイトを観てもらう事にして…。


面白いのだけど、ストーリー的に後味は必ずしも良く無い*1。だから、全面的に良かったと言い辛い感じ。けど良作。


実のところ、ネット各所で評価されているほどには期待していなかったのだけど、結構な良作だった。
青年の体験した旅の途中の一夏の出来事という、有りがちな序盤にもかかわらず、常に不穏な空気を漂っている。普通の日常的なシーンでもやはり不穏な空気。さらに幼い子供と「セイジ」が戯れるシーンでも不穏。セイジ役の西島秀俊の不穏な演技も凄いのだけど、それを徹底させた演出も良かった。
で、その不穏な空気はある地点で最高になるのだけど、そのシーンの緊張感が半端無い。凄い。
さらに、観る側に開示する情報と開示しない情報を巧妙に切り分けていて、観る側の感じる疑問点をそのまま主人公である「旅人」の疑問点と一致させて物語にのめり込ませるテクニックも巧い。このお陰で、一見退屈に見えるシーンでも飽きさせない。面白い。
ただ、その開示させない部分が行き過ぎて、ちょっと「アレはどうなったの?」と思わせたままの部分が散見されるのが、ちと気になる。けど、それは想像次第で色んな展開が有りうるという監督からのメッセージなのかもね。


しかしまあ、「金髪の草原」で「味の有るセリフ棒読み」を披露してた伊勢谷友介という俳優が監督としてここまでの映画を撮るようになるってのは、ちょっとした驚き。既に俳優の片手間仕事では無いよ。
観ている時にふと思い出したのが、北野武監督の「3-4x10月」。あの普通のシーンでの独特な「嫌な感じ」を思い出した。もしかすると北野監督と同じで場の空気というか嫌な予感を表現するのが巧い監督なのかも知れんね。


てなわけで、ほとんど宣伝されているのを観ないのだけど結構な良作なので、かなりオススメでやんす。

*1:多少の救いは有るのだけど