思い出した事

K君の事

K君と私は、幼稚園の頃からの友達だった。
彼の家は私の家から2ブロック程離れた場所にあるプレス工場を経営しており、工場の奥にK君と家族が暮す住居があった。工場は所謂町工場のプレス工場よりはちょっと大きく3階建てのビルになってた。当然、それだけの規模のプレス工場なので結構な騒音を出すのだが周りは空き地ばかりで近所の迷惑になるという事も無かった。
しかし、私が小学校に入る頃になると周囲の空き地に建て売り住宅が立ち並ぶ様になり、以前はぽつんと建っていた工場がいつのまにか住宅に取り囲まれるようになっていった。
やがて、K君の家に工場周辺に住む人達から「工場の騒音が五月蝿い」と抗議が来るようになった。
K君の親御さんと付き合いもあった私の両親などは「工場が先に建ってて、そこに工場が有るのを承知で後から入居してきた人達が抗議するのはおかしいんじゃないのか?」と言っていたのだが、K君の両親は抗議に屈して、さらに郊外へと工場ごと引っ越して行ってしまった。
それ以来K君とは会っていない。


そして昨今のニュースでは、元は空き地ばかりだった場所にあった米軍基地が後から周囲に入居してきた善良な市民達に追い出されようとしている。
それが悪い事だと言うつもりは無いのだが、そのニュースを見るたびに、私は引っ越していったK君の事を思い出す。